踊り

夏から秋の夜ふけに、よく田町へ写真を撮りに行っていた。
「今の田町はあんまり好きじゃない、情緒がなくて」とはぜんさん曰くで、それはきっと花街だった昔から比べたらそうかもしれない。
でも、立ち止まれば三味線のお教室はまだあるし、上を見あげれば建物の2階の木製の柵は置屋だったその時のままだ。
ひじをかけて、窓の外を眺められるような柵。
最近すっかりフリッカーを更新しておらず、並んでいる自分の撮った写真にがっかりしながら眺めていたら出てきた写真。

上の方ばかり見ていて、ふと前を向いたら浴衣の集団が目に入ったのだった。

青年会、じゃんがらかな…と思いながら、でもいい歳のおじさん達で、少しくたびれた感じが街のいぶした光と似合っていて素敵だったな。


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東京タワーを見に行きたい。
地震の時にすこし曲ってしまった東京タワーを見て、深呼吸をしたい。
すこしだけ、息苦しくて。


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先日、知人の手話を見ていて
「そのとき、本を読んでいてね」と話す、かおりさんのあの仕草がフラッシュバックした。
手を本にして開く仕草。

手話は踊りに近い。フラもたしかそうだったはず。
雪を示す手話はひらひらと舞うように落ちて美しいし、感情表現を示すには言葉よりも手話のほうがいいのではないかと思うほどに豊かだ。

「欲しい」は喉から手を出す。
「淋しい」は両手で心を閉ざすように。

きれいだな、といつもいつも思う。

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なにかを決める時期にきている。
きちんと見据えて、決めなくてはならない。

一方で、私は根なし草なのだからと開き直りつつあり、いっそう気を付けなくてはならない…。

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