あまのさんとわたし

朝起きて、すこし前に解凍していた豚肉のかたまりを忘れていたことに気がついて、お弁当のおかずにしようと煮ていたら、胃けいれんを起こしてしまった。
胃けいれんはこないだもやっちまったし困ったなどうすべえ、と悩んで、というか実のところ悩んだというよりも、5秒くらい考えて、会社に休みを取ると電話した。ギブアップ。

人が足りないし困った時はお互いさまだと思うから、どこにでも行くしなんでもやるうちに、いつの間にか会社の都合が私に向いているのを自覚していて良くないな、と思っていたらこのざまだ。ちゃんと断れる人になろうと思うし、うちの会社、まず計画というかあらかじめが特に必要だと思う…。フレキシブルすぎる…そして疲れている……!


昨夜、仕事が終わって灯りをつけて踊るブルドーザーを眺めて、あまのさんからきた「毛沢東はゲイ」というメッセージを、どう返信するんだこれは、と悩みつつ、グーグル検索をしてみたらヒトラーもゲイだったなんて話を読んで、ふとチョコレートには幼児的暴力性を脳から引き出すんだよ、ヒトラーはチョコレートをよく食べていたんだって、と聞いた話を思い出しそのままあまのさんに送った。
あまのさんとは2012年、参議院選挙の時に取材依頼のメールを受け取って以来、何度かメールのやり取りをして、しばらく経ってから1度お会いした。
いわきにいます、お茶でもいかがですか、駅のドトールで待っています、と言われて、構いませんよと返信し、向かって、ドトールの中を見渡して、肩幅が広く痩せて疲れたオーラ全開の男の人を見つけて、間違いないなとまっすぐその人に向かったのを憶えている。果たしてあまのさんは、その人だった。

何を話したのかあまり憶えていない。あまのさんはグラスに残った氷を眺めていて、瞳が大きくて黒かった。

その後もいまも、たまにメールをくれる。ある作家と仕事をしていたときの話とか、ただひとことだったり、ふと息を吐くようにメールを送ってくれる。あまのさんの書く言葉はいつも乾いていて、わたしはそれが好きだ。
東京のどこかであまのさんは生きていて、エネルギーや光や欲や希望や目標やカタカナ、いろんなものに溢れる東京で、それに目もくれず飄と立つあまのさんを想像する。
想像して、ごはんちゃんと食べてるのだろうか…とか心配をしてしまう。冷え切った味噌汁とか飲んでそうなんだもん…。


いまは午後4時28分で、こんこんと眠ってしまって、休んでごめん、もう大丈夫と電話を会社にした。本を読むか、白湯を飲むか、また眠るか。