雑感

 


散歩に行きたい。
あてもなくぶらぶらと歩き、いつものように迷子になってうろうろ探したい。
迷いに迷って、どこでもない場所にたどり着いてもおもしろいと思う。
ついでに仕事を見つけて、知らないふりして働いてもいい。
よしもとばななの小説によると、恋が生まれるかもしれないのでしっかり気を持たなくてはならない。
夜中に闇でやっているラーメン屋には男の人が働いていて、サッポロの塩ラーメンと柿の種をおつまみに出してくれるかもしれない。
ニコンを持っていくといいかもしれない。
でも、本当の思い出は心に留めておくものだ。


とここまで考えて、これは散歩レベルではないねと気がついて小さい散歩に出かけた。
流されていくには、まだやるべきことがたくさん残っている。



ルーマニアの写真家 Silviu Pavel氏の写真を、朝、昼、昼、夕方、夜、夜更けと頻繁すぎるほどに眺めている。気がついて時間があれば彼のサイトを訪れる。
写真のその向こうには、やはり延長線上の世界があり、その世界は彼の手によって自由に切り取られる。
彼の出す青が好きだ。くっきりとしていないのに、なぜか目に残る青。ここの海の色に似ているからだろうか、とても懐かしい色。

どうだ!と言わずにそっと語りかけるような、しかし置いて行かれるような冷たい感触。
冷たい…というか、遠い感触だ。
延長線上という概念は変わらないのに、触れそうに懐かしいのに、すごく遠くうつくしい。

わからないものに限って、うつくしく見える。
彼の写真で旅をする。声が聞こえればいいのに。

光は見える。音は聞こえないことに寂しさと渇望を感じる。聞こえたら色見が違って見えるかもしれないのに。
違って見えても、本当の事ならばそのほうがいい。


写真は右iphone、左ニコン
怠けている、完全に怠けている。せんせいに怒られそうだ、iphone(カメラ)の有能さをひしひしと感じている。
そしてホルガが欲しいとか思う自分を折りたたんで捨てようと思っている。



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